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執筆者の写真サービス フードガイド

紅麹は危険?ベニコウジ色素とは違うの?多くの食品で使われる添加物についてプロが解説 ※随時更新

更新日:10月7日


紅麹は危険?ベニコウジ色素との違いをプロが解説

はじめに ※随時更新記事

近頃「紅麹」を含む一部の健康食品について健康被害が報道されています。

紅麹ってそもそも何?

ベニコウジ色素と紅麹が入っているけど食べてもいいの?

製造者はどのように対応するべき?

 また、報道以降、様々なサイトやSNSなどで解説や意見も取り上げられていますが、事実と異なる・不安をあおるような表現がされているものも多く見受けられます。(筆者が確認した多くも、かなり誤解や誤認を与える情報が根拠なく、さも事実のように述べられているものばかりでした。)

普段、食品加工製造・食品表示について質問返答・サービス提供をしている筆者の見解を記事として公開いたします。


※続報 2024/7/20追加

【紅麹問題】機能性表示食品の法改正において製造事業者がすべき対応は?【機能性表示食品/法改正まとめ】↓バナークリックで記事へ↓

【紅麹問題】機能性表示食品の法改正において製造事業者がすべき対応は?【機能性表示食品/法改正まとめ】

■結論

結論としては、健康食品の「紅麹」と着色料の「ベニコウジ色素」は、原料は同じでも主要成分が異なるため、混同して考えてはいけないということです。

 気がかりな場合は、紅麹を使用した食品や添加物を製造する際に他にどのような成分を含んでいるのかを確認するのが適策と言えます。

紅麴イメージ

■そもそも「紅麹」とは?

紅麹とは、米にベニコウジカビを混ぜ入れ発酵させた米麹のことをいいます。材料は米と、発酵作用のある菌ですので食材として扱われます。昔から日本、世界でも料理や調味料として使われてきました。(沖縄の郷土料理「豆腐よう」や台湾の酒粕「紅糟(ホンツァオ)」、上海料理の「無錫排骨(ウーシーパイグー:スペアリブの煮込み)」など。)

 ここで使われるベニコウジカビですが、発酵活動時に色素を産生します。名前の通り紅色を示し、上記で挙げた料理も赤みを帯びているのが特徴でもあり、この色素を利用したのが「ベニコウジ色素」と呼ばれる着色料です。

日本では、自然から採取できる、昔から活用されてきた食材から抽出した食品添加物を既存添加物と分類しており、ベニコウジ色素もその1つです。


■健康食品としての紅麹

 最近では、紅麹は健康の観点からも有用であるという研究が進んでいます。例えば、「悪玉コレステロールを下げる」「血圧を安定させる」といった見解です。これらの健康効果を推し進めたものが、サプリメントなどの健康食品として販売されています。

 この際、紅麹以外の成分を含むことがあります。理由として、先述したように紅麹は菌の働きによって作られる物なので、有用成分の量や効力には個体差が生まれます。その差を埋めるために、他の成分を補填したり、濃縮するなどの加工を行います。そうなると、自然にできた紅麹と100%同じとは断言できません。そのため、自然の紅麹が安全だとしても、サプリメントの紅麹も安全と言い切れないのです。

(※ 上記内容の研究を行っているところがある、というものであり、当ブログで紅麹の健康効果を認証・推奨しているわけではありません。)


■菌が産生するカビ毒

 ベニコウジカビそのものは、ヒトに害を与えるものではありません。ですが、ベニコウジカビといっても多くの種類が存在し、そのとあるベニコウジカビの中にはヒトにとって有毒なカビ毒(シトリニン)を産生するものも存在しています。そもそもベニコウジカビに限らず、カビというのは非常に種類分類とともに多く存在しており、新たに生まれているものや発見されていないものも多々あります。

 EUでは、シトリニンのサプリメント中の基準値を設定したり、紅麹の扱いに注意喚起がなされている国もあります。

ただしベニコウジカビについては、シトリニンを作り出す遺伝子を持たない種が確認されているため、日本ではそちらを利用しているところがほとんどです。


ベニコウジカビ

■着色料:ベニコウジ色素と紅麹の違い

 さてここで、食品添加物として使われる着色料「ベニコウジ色素」について見てみましょう。

着色料としてのベニコウジ色素は、健康効果を目的としたものではないので、有用成分の個体差を埋める必要はありません。色素成分のみを取り出したものになります。当然、ベニコウジ色素を使用することで健康効果を提示することもできません。

また、ベニコウジ色素を作るためのベニコウジカビも、シトリニンを作らない種を使用しているメーカーが大部分です。

つまり、「ベニコウジ色素」の製造には健康食品としての「紅麹」のような健康有用成分もカビ毒も含まれておらず、紅麹の色素成分だけを抽出しているというのが一般的です。


紅麹は発酵調味料ではない

■発酵調味料=紅麹ではない (2024/3/28 一部報道について見解追記)

 現在、紅麹に関する様々な製品が自主回収されたり、問い合わせが続いたり…と影響が広がっています。

 前述したように、「紅麹」と「ベニコウジ色素」は主要成分が異なるにも関わらず、「ベニコウジ」と付いている事で大事を取って回収するといったケースも見られます。

 また、「発酵調味料」と表示された製品が危険なのではないか、という声も出ているそうです。とある大手販売店の自社製品に含まれる「発酵調味料」。その中に紅麹が使用されているため自主回収が行われた事が理由で、「発酵調味料」も紅麹だ!いう間違った認識だけが一人歩きをしているようです。

 ここで正しく理解しておかなくてはならないのが、全ての発酵調味料に紅麹が含まれてるわけではない、という事です。

普段調味料として使っている酢・醤油・味噌・みりん。これらも全て、穀物や大豆を発酵させて作った「発酵調味料」です。

調味料の多くは、うま味や保存性を高めるために発酵によって作られています。これらを作るのに、必ずしも紅麹が入っているわけではありません。(むしろ入っていないもののほうが大半です。あくまで紅麹は付加価値や他製品との差別化のために使用されているものです。)

 報道の仕方によっては、誤った認識を与えかねません。今回の件についても、今はまだ原因を追及している段階で、はっきりとした原因は発表されておりません。紅麹の何がいけなかったのか。そもそも紅麹自体に問題があったのか。情報を正しく判別する必要があります。


■プベルル酸とは?(2024/3/31 追記・追加情報)

 新たな情報として、今回健康被害が生じた製品の同ロットから「プベルル酸」が検出されたと説明されました。

聞き慣れない物質名ですが、プベルル酸は、別名プベルリン酸といい、トロポノイドと呼ばれる有機化合物の1つです。北里大学の研究者(大村氏、砂塚氏ら)のグループによって、マラリア原虫に対抗する高い活性作用をもつ事、同時に生体内で強い毒性をもつ事が見出されています。(ただし腎臓に毒作用があるかは不明。)

プベルル酸は、自然界の中では青カビから産生されます。ここで気になるのが紅麹を作る際に使われるベニコウジカビとの関係性。ですが、青カビとベニコウジカビは(類縁関係はあるものの)アオカビ属とモナスカス属で属性が異なるため、ベニコウジカビからプベルル酸が産生したとは考えにくい状況です。

果たしてプベルル酸が原因なのか。プベルル酸であるならば、それを自然産生する青カビがどこかから混入する環境があったのか、それとも化学反応的に合成される条件があったのか。原因究明に関する情報に注視していきたいと思います。



※続報 2024/7/20追加

【紅麹問題】機能性表示食品の法改正において製造事業者がすべき対応は?【機能性表示食品/法改正まとめ】↓バナークリックで記事へ↓

【紅麹問題】機能性表示食品の法改正において製造事業者がすべき対応は?【機能性表示食品/法改正まとめ】



■製造者としての対応は?正しい見解と対応方法・後援について

 今回のような出来事があると、様々な意見や見解が錯綜します。

 一般の消費者はもちろん、メーカーなどの各社や店舗でも「我が社でも使用しているが、問題はないのか?」「そもそもうちの店で使用しているものは同じ類いのものなのか?」「取引をしている会社から説明を求められたが専門家がいないため説明ができない、正しい説明ができているのかわからない。」といった不安や懸念の相談をよく頂きます。


フードガイドサービスでは、材料や成分について解説、製造業者に何をどう問い合わせればいいのか、問い合わせの返答解説、等総合的なサポートサービスを行っています。

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■まとめ

 健康食品の「紅麹」が問題になったからといって、一概に「ベニコウジ色素」も危険である、とは言えません。なぜ・何が問題なのか、どう対応すればよいのかといった正しい見解を得られる状況で判断する必要があります。




 

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■執筆者

上級食品表示診断士:塚狭智美

塚狭智美

■資格

・上級食品表示診断士

​・管理栄養士、栄養士・調理師・幼児食アドバイザー・食生活アドバイザー

■経歴

集団調理に管理栄養士として長年勤務​

その後栄養士養成学校・調理師養成学校にて食品表示、幼児食、栄養学の分野で教鞭をふるい10年以上のキャリアあり。

地方自治体の食品提供イベントの運営、

企業・個人店舗の食品コンサルの経験多数あり


■参考文献

国立健康・栄養研究所

素材情報データベース「ベニコウジ」より

食品安全委員会「健康食品に関する危害情報について」

食品衛生の窓「着色料」より


参考文献:朝日新聞社



2024/3/31 

2024/3/26 記事公開

2024/3/28 一部報道について見解追記/質問箱設置

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