2022年3月18日、外国産アサリが熊本県産として多量に流出していた可能性がある問題を受けて、消費者庁における食品表示Q&Aが改正されアサリの原産地表示ルールを厳格化されました。新ルールでは、輸入アサリの原産地表示は国内での生育期間に関わらず、原則的に輸出国とすることが明確化されています。
今回は、アサリの原産地表示ルールの要点について簡潔に解説します。
熊本県産アサリ産地偽装問題
今回のアサリの原産地表示ルールを厳格化に至った背景には、熊本県産アサリの産地偽造問題があります。
かつて、熊本県は全国有数のアサリの産地で日本一を誇っていましたが、平成15年の6,877トンをピークに生息環境の変化や災害の影響で平成21年以降は急激に減少し、2020年にはわずか21トンまで落ち込みました。
しかし、農林水産省による2021年10月から12月末までに販売された「熊本県産」アサリのDNA調査等で、97%が外国産の可能性が高いことが判明し、しかも、調査期間3カ月間の「熊本県産」アサリの推定販売数量は2485トンと、2020年の漁獲量21トンと大きな乖離があることがわかりました。
原産地表示 ルールの厳格化
アサリの産地偽装問題を受けて、消費者庁における食品表示Q&Aが改正され、輸入アサリの原産地表示ルールが厳格化されました。これにより、蓄養期間が貝類の全体の生育期間(いわゆる長いことルール*)に含まれず、原則として輸入アサリの原産地は輸出国となります。
ただし、例外として、輸入した稚貝を区画漁業権に基づいて「1年半以上」生育し、根拠を示す書類を保存している場合に限り、国産と表示できます。アサリの通常の採捕までの所要年数は約3年であることを考慮して期間が整理されています。
*畜産物や水産物などで生育地が複数の場合、飼育や養殖の期間が最も長い地域や国を「原産地」として表示するルール
<原産地表示ルールの改正後>
※【出典】消費者庁:アサリの原産地表示ルールの厳格化より抜粋
熊本アサリ原産地偽の発覚を受けて、熊本県は約2か月間にわたって県産アサリの漁獲と出荷を停止する措置を取りましたが、2022年6月より、独自のトレーサビリティー制度(生産流通履歴管理)等を本格運用し、漁獲・出荷を再開しました。
まとめ
アサリの原産地表示ルールが厳しくなり、輸入アサリは原則的には輸出国を表示し、国内産表示は一部条件付きで認められるようになりました。これにより、産地表示の適正化が進んでおり、2023年4月には熊本県産のアサリが関東地域でも販売が一部、再開されています。
<参考文献>
(全データ2023/06/20参照)
執筆者
管理栄養士:横川仁美
食専門ライター×Nadiaアーティスト(料理研究家)
管理栄養士を取得後、保健指導を中心に、のべ2500人の方の食のアドバイスに携わる。現在は、食事・栄養・食材のコラム執筆・監修、レシピ作成を中心に活動、薬機法・景品表示法・健康増進法・食品表示法の知識もいかしながら、様々な企業の記事作成や商品オリジナルレシピ開発を行っている。
※この記事に掲載されている情報を利用する際には、お客様自身の責任で行ってください。
※本記事の情報は公開時や更新時のものです。現在の状況や条件と異なる場合があります。また、記事の内容は予告なく変更されることがありますので、ご了承ください。
※こちらの資料の内容に関しては万全を期しておりますが、お客様の判断と責任のもと、ご利用頂けますようお願いいたします。
Comments